コーヒー産地訪問記 台湾編

台湾阿里山珈琲農園 鄒築園<ゾウジュユエン>視察

参加人数合計15名(日本人のみ)の台湾コーヒー農園の見学ツアーに参加

台北駅→嘉義駅まで新幹線約1時間40分&農園までバス約2時間の大移動(往復約8時間)

農園を見学→精製工場案内→カッピング体験→コーヒーショップ観光

山道までの道のりは険しく崖になっている道を大型車が何台も通っており、阿里山はお茶の名産地でもある為所々に茶の販売所があり道路は整備されており、道中にはたくさんのヤシの木も自生しており日本では中々みられる光景ではありません。

鄒築園農園紹介

台湾の嘉羲県阿里山山脈を中心とする山岳地帯に存在する樂野鄒築園。オーナーである政倫(ファンジョンルン)さん※以下方さんは阿里山郷樂野部落の原住民族・鄒(ツォウ)族の出身。農家になる前は北部で電子工学を学び、就職していたとのことです。

就職後の方さんは故郷に戻り胡蝶蘭栽培と茶園を営んでいましたが、20年前よりコーヒー栽培を本格的に始め、現在は総面積約5ヘクタール(約1万5千坪で例えるならば東京ドームほどの広さでしょうか?)で現在約5,000本のコーヒーの木が植えられている農園を経営されています。今までにも新品種「ソエンナ」の発見や最新栽培技術を取り入れるなどコーヒーの最新鋭を追う農園の一つとして認知されつつあります。

近年の受賞歴:

2021典藏排湾スペシャルティコーヒー国際オークション、3件ノミネート
2020阿里山菁英賽、1万8千元/Kgのオークション価格
2019台湾国際スペシャルティコーヒー豆評鑑、特等賞

珈琲農園を見学

方さんに案内された農園は経営するコーヒーショップから僅か離れた場所で、標高1200mほどの山地です。

今回見学したエリアは「より良い(美味しい)品種をテストするためのコーヒー園」であり、台湾市場に流通している阿里山珈琲は別のエリアで栽培。この農園の中では20種類以上の品種の苗木が植えられており、方さんはすべての種類をカッピングしてより美味しいものだけを選別して栽培しているとのことです。

阿里山という山岳地帯は一年を通して気候がよく寒暖差があり、雨季もある為コーヒーの生産地としての好条件が揃っています。実際に農園の中には今まで目にしたことがないほど、艶やかな葉と実をつけた木が多くありました。

また、方さんの農園では品質管理システムを導入して気温・湿度・降水量・風向きなどをほぼリアルタイムで確認を一括管理。データを元に水をやるタイミングや土壌に何が不足しているかを把握して的確に処置を施すことが出来るようです。農園知識をIT化する事で作業を効率化&再現性のある高品質なコーヒーが作れるという話にも納得が出来ました。

カツアイ、アラビカ、ティピカ、ゲイシャと様々な品種を揃えたハイブリッドな農園で自然交配をさせて新種への研究にも取り組んでいるという話を伺いました。方さんはコーヒー農家だけではなく研究者としても熱心な人だと感じます。

コーヒー農園

農園では試験的に栽培し品質を見極めてのトライアンドエラーの繰り返しで、より品質を高める仕組みを整えていました。コーヒーの生産大国では病気にならない・一株当たりの作付けが多いなどのコストを重視した品種や生産方式を重視している国が多く、台湾ではそれらの方式にコスト面でかなわないことを理解しているとのことです。

台湾ならではの高品質なオリジナリティに重きをおいたコーヒーづくりのために、ゲイシャ種やリベリカなどの栽培も施行しながら、よりおいしいコーヒーづくりに向けている情熱を説明からも受けとりました。

精製工場の案内

農園を一通り見学した後は精製工場の中へ入ります。

入口には収穫したコーヒーチェリーを入れる水洗槽、運ばれたコーヒー豆は水を使って地下へ運び込まれます。

鄒築園の精製処理は収穫時期や天候によって様々で主にウォッシュド、ナチュラル、ハニープロセス。

雨がよく降るために天日乾燥をすることは少なく、胡蝶蘭栽培に使用している温室乾燥をさせることもあるとのこと(温室内の温度等はコンピューター制御で管理)その他にもドラム式の乾燥機を使用している様子です。

ブラジルから仕入れた脱穀機で台湾農園の中で取り入れているのは鄒築園のみ。ブラジルの中でも最小サイズですが聞き及んでいるよりも大きく、一時間で最大6トンまで処理(鄒築園の一年分収穫量を一度で処理)することができるとのこと!

工場は地上から地下2階の構造で、精製工場以外にもカッピングができる部屋や焙煎機が設置された部屋がありました。

ブラジルやコロンビアなどのコーヒー大国の処理場に比べるとコンパクトでありながらも各国から機材を取り入れており、これら全てが阿里山珈琲の味を作ることに追求した、方さんのこだわりの空間。

地上から運ばれてきたコーヒーチェリーの不純物を選別、脱穀

コロンビアから取り入れた大型機で水を利用して適性よりも比重が重い不純物は下へ、水面に浮かんだ未成熟豆を取り除くことができます。

地下に進むと豆を乾燥させるドラム式乾燥機が2台

温度設定や乾燥時間の全ての工程をデータにとってパターン化する事で高品質な味わいを再現、より良い作り方を探して研究しているとのことです。

スクリーン選別機と豆の密度(比重)選別機

カッピングエリア、焙煎機

SC AA(アメリカスペシャルティコーヒー協会)のカッパーライセンスを持つ方さんですが、台湾においてこのような資格を持った農家や業者は少ないと言います。今回のようにツアーの参加者や豆販売業者に珈琲教室やコーヒー生産についての指導をして、スペシャルティコーヒーへの理解を深める活動にも注力されています。

台湾珈琲はコーヒー生産国の中でも生産量が少なくかなり高値です。しかし、方さんの農園のように全土で品質管理に徹底してこだわり、小規模農園だからこそできる味わい(品質)に追求したクオリティの高いスペシャルティコーヒーを生産しています。今後はコーヒーの有名生産国として認知されていく日も遠くないかもしれません。

カッピング体験

鄒築園のコーヒーをカッピングさせてもらう貴重な体験! 10種類のカップをブラインドでカッピングして、自分が好きな種類をお互いに意見交換を行いました

10種類のコーヒーはティピカ、パカマラ、SL–34等…ゲイシャは3種類も!※S L-34はケニアの品種

カップ感想

ティピカ・・・原木、ウッディな香り、チェリーの皮のような渋みが残った

ゲイシャ・・・カカオの酸、スパイシー、トロピカルフルーツ、突き抜けたフレーバー

SL–34・・・発酵の香りが強いパン、ミルキーなマウスフィール、ソイソース、紅茶

ゲイシャは際立った美味しさで繊細な香りが持続しながらもコーヒーらしさのあるバランスのとれた味わいで印象深く、さすがゲイシャといった感じを受け取りました。

最後に

方さんの夢は自分のコーヒーを世界に届けることだとおっしゃいました。その目標を現実にする為に可能性一つ一つにトライアンドエラーを繰り返し、より高い品質への仕組みつくりに進み続けている方さんのコーヒーに対する情熱や、コーヒーに対する姿勢に感銘を受けました。

そして、この努力や生産者の想いを消費者に届ける事ができるのは私たち販売者であり、お客様が最高の一杯のために伝える役割があると改めて考えさせられました。

台湾珈琲農園見学者:福田マイスター 中農マイスターレポートより抜粋

コーヒーのキャラバンサライ店頭ではSCAJ認定のコーヒーマイスターの資格を持ったマイスターがお客様のコーヒーに対する疑問や美味しい淹れ方などのアドバイス販売を行っております

コーヒーマイスターとはコーヒーに対するより深い知識と基本技術の習得をベースとし、お客様へ豊かなコーヒー生活が提案できるプロのコーヒーマン(サービスマン)のことで、日本では初めての認定資格となります。日本スペシャルティコーヒー協会が主催する「コーヒーマイスター養成講座」を修了したのち、認定試験に合格するとコーヒーマイスターとして認定されます。

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